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第2回運営委員会主催セミナーレポート

2021年9月10日(金)に第2回日本介護経営学会運営委員会主催セミナーが「ICTを活用した、これから多職種連携」をテーマに開催されました。

当日プログラム

事前アンケート結果についてはこちらよりご確認ください。

開会あいさつ
栃本一三郎副会長
(本学会副会長/上智大学 教授)

冒頭、栃本副会長より、今年度からスタートをした運営委員会主催セミナーの第2回目の企画として「ICTを活用した、これからの多職種連携」をテーマに、宮島俊彦監事のコーディネートにより開催する。今回のセミナーは、当学会の特色である「現場の介護経営を担い、第一線で活躍される方々」と「研究者」がともに集うということをよく表現されているものである。

宮島監事・山下医療介護連携政策課長からの講演、アンケート結果報告、ICTに関する事例報告、そして、ディスカッションと盛りだくさんの内容である。今回は、会員だけではなく一般の方々にも多くの参加をいただき、2時間という限られた時間ではあるが、活発な議論と意見交換を行っていきたいと開会のあいさつがなされ、スタートを切った。

講演1「オンライン地域包括ケアの可能性」
宮島 俊彦氏
(本学会監事・運営委員会委員/兵庫県立大学大学院経営研究科客員教授)

介護分野のDX化等の議論は、2016年11月の「未来投資会議未来投資会議-Society 5.0」での安倍首相(当時)から端を発している。当時、介護でもパラダイムシフトを起こし、本人が望む限り回復を目指せる「自立支援型」の介護にすると発言がされた。

その発言から4年が経過し、今年から科学的介護情報システム「LIFE」が導入され、データの蓄積がスタートをした。今後の介護分野DX化について、介護・看護記録の共通言語化、利用者のプライバシー情報の事業者連携・生活支援や住まい環境、家族関係などのファクターを含めた評価基準に関してなどの課題提起がされた。

アンケートの集計結果について報告
香取 幹 氏
(本学会理事・事務局長/株式会社やさしい手代表取締役社長)

香取事務局長より、「ICTを活用したこれからの多職種連携」をテーマに介護従事者と要介護高齢者家族に対して実施をしたアンケート結果に関して報告がされた。アンケート結果より、「要介護者等の家族の多くは、ICTシステムを通じて、LINEやSMSなどで気軽に介護事業所とのコミュニケーションを求めていること」が分かり、介護従事者も「職員間や多職種間とのやり取りをLINEのような形で行いたい 」「家族に職員間や多職種間とのやり取りの中にLINEやSMSで気軽に参画をして欲しい 」「家族に介護サービスの内容やご様子を知らせたい」と思っているとの結果等を得たことが報告された。

アンケート結果はこちら

ICT事業者事例報告
竹下 康平 氏
(株式会社ビーブリッド代表取締役)

竹下氏より、今までのICT活用は、「レセプト中心のICT」「生産性向上、業務効率改善を目的としたICT活用」という範囲で議論がされていたが、令和2年コロナ禍により「密回避、感染症対策の一環としてのICT活用」や「見守り機器、インカム、SNS、WEB会議ツールの活用」が急速に進み、令和3年の法改正によるICT活用(LIFE、BCP、その他)により重要性を増している。科学的介護の推進の重要性という観点からもICTは、必須である。介護事業者は、急激なICT化の波に溺れかけているとの指摘がされ、「介護事業者が取り扱う「要配慮個人情報」 改正個人情報保護法の解釈」に関して問題提起がされた。

 

ICT活用介護事業者事例報告
濱岡 邦雅氏
(セントケア・ホールディング株式会社取締役執行役員 事業企画本部長)

ICT活用のための体制づくりとして、新しい事業を創造する事業企画本部に管理本部の中にあった「情報システム部門」を移し、DX等の新しい価値創出する取組を実施をしている。既存のシステムに関しては、サービス毎に多岐に渡り、世代も古いものをあり、現在、作り替えの行っている。

コロナ禍を受け、多職種連携時代に向けた多職種・利用者・社員間でもコミュニケーションプラットフォームが劇的に整備がされた。

LIFEなどの外部データ連携プラットフォームは今後の開発になるが、「現場のデジタル化」と「バックシステムの世代交代」をしっかり行うことでルール整備・法整備がされた暁には、API連携等により、情報連携が進むと考えていることが報告された。

講演2「デジタルで医療が変わる~次は医療と介護の情報連携~」
山下 譲氏
(厚生労働省保険局医療介護連携政策課長)

オンライン資格確認の導入(マイナンバーカードの保険証利用)について、「私書箱」に例えて、説明がされた。現在の健康保険証は、顔写真等がなく、「本人確認」をするこができないが、マイナンバーカードが保険証利用されるとことにより、顔認証や暗証番号により、「本人確認」を行うことができるようになる。私書箱の番号は、マイナンバーになり、私書箱の中には、医療機関が「いつ・誰に対して・何をしたか」などの情報が格納される。1人1人の治療の履歴が集まり、自分が受診をした医療機関でこれまでの治療情報等を本人のコントロールの元に共有することが可能となる。なぜ、医療の分野で、できるかというと「レセプト」という「共通言語」で「共通の形」があったからである。それが医療分野のDXで起こっていることである。介護分野でどのようにDX化するかについて本日議論をしたいとのことで締めくくられた。

ディスカッション
【ファシリテーター】
宮島俊彦氏
【コメンテーター】
濱田和則氏(社会福祉法人晋栄福祉会理事長)
【パネリスト】
山下 護氏/竹下 康平氏/濱岡 邦雅氏/香取 幹

宮島氏をファシリテーターに、コメンテーターとして、濵田和則氏(社会福祉法人晋栄福祉会理事長)を迎え、登壇者にてディスカッションが行われた。

「要配慮個人情報の取扱」や「LIFE」「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」「介護分野におけるマイナンバーカードを活用したデータベース構築」などに関して、それぞれのお立場からの意見がなされ、活発な議論がされた。「ICTを活用したこれからの多職種連携」がテーマであったが、広がりのある議論がされ、問題点の共有や深堀をすることができる議論であったと締めくくられた。

閉会あいさつ
田中 滋氏
(本学会会長/埼玉県立大学 理事長・慶応義塾大学名誉教授)

「ICTを活用したこれから多職種連携」というテーマをはるかに超えて、介護分野のDX・ICTを活用したマネジメントシステム、オンライン資格認証など広がりのあるセミナーであった。今年の介護報酬改定の目玉であった「LIFE」に関しては、様々な分析や期待・評価が示された。次の報酬改定では、「訪問系サービス」「居宅介護支援」を「LIFE」の対象にできるか検討することが決まった。「LIFE」は、個々人のレセプトとも異なり、「LIFE」を活用すると一人一人のプランが良くなるとも違い、マネジメントの仕組みに役に立つものである方向性であると考えているとコメントがされ、最後に、パネリスト・協賛企業への謝辞がなされ、セミナーが締めくくられた。

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